I am not perfect but I am LIMITED EDITION (前編)

with 3件のコメント

昼日中から子供を見つけては

子供の頃『ガンバット』なる変わったおっちゃんがいた。どの町にも必ず一人はいる変わった言動をする有名人のおっちゃん。それがウチの地区では『ガンバット』だった。

 
 
「ガンバット?」
 
 
 
と声をかけて来る。今思えば「頑張ってるか?」と言うことだと思う。時にやんちゃな子供たちに追われ逃げ惑うガンバット。時にガンバットが来たと、子供に逃げ出されるガンバット。
 
 
そんなガンバットは噂も絶えない。ガンバットがたまに乗っている赤いボロボロの軽自動車を、怖ぇ中学の先輩たちがボコボコにしたとか。半年に一回は死んだらしいと噂になったり。それでも、そんなことはお構いなしで、人目を気にすることなく優しく子供を応援し続けていたガンバット。
 
 
面倒臭くちょっと変わったおっちゃんは、今どうしているのかな。
 
 
そんなことを思い出させてくれたのが、今回の主役である河野さんことコウちゃんである。
 

本日のFeeling Radio

記事のBGMにどーぞ。

 

Bombskare -『Triplet Fiasco』(Official Video)

 

 

 カオサンのコウちゃん

身体から早くもアニマルな匂いが立ち昇り始めたタイ2日目。。。徐々に旅っぽくなって来た感覚。いつもの様にカオサンストリートを徘徊パトロールしていると、タイ人が生バンドで演奏をしている一角を発見した。
 
 
レゲエやサンバのリズムを奏で、暑い国によく似合う選曲でお客の足を止めている。そこにすかさず客引きが「ビールでもどうですか?」と声をかけ、バンドの前に並んだ椅子へ誘っている。要するに野外ライブバー。
 
 
そのバンドをよく見ると、えらい年配のタイ人が汗を振り散らしながら、手にしたマラカスと腰を小気味よく降っていた。金髪やロン毛のバンドマンの中、一人だけ浮いている老人。だけどエネルギッシュで一体感がある。目が合うと
 
 
「日本人か?」
 
 
と声をかけて来たその人がコウちゃん。御年70才である。
 
「カオサンで俺を知らなきゃモグリだよ」そう言うコウちゃんは、4ヶ月程ここカオサンに住みつき、夜な夜なバンドマンとセッションをして暮らしていると言う。
 
 
「この前なんかお前、400バーツもチップもらったよ 笑」
 
 
実際におカネを稼げているのだ。自分にできることで、自分の才能を使って人に喜んでもらい、その対価としてお金を得る。知らない土地や国でも、しっかり生きる技術を持っていると言うこと。ただ、基本は少しだけ日本から年金を送ってもらってるとも言っていた。
 

 集まる情報、生きる技術 

出会った時、コウちゃんはかなりジリ貧だった。1日30バーツで後1週間過ごさなければいけないと言っていた。
 
 
「俺は九紫火星だから、情熱と名誉の星回りなの。だから人に金を借りるのはプライドが許さない」と、九星気学にも長けているコウちゃんは言う。
 
 
「じゃぁ、メシとかどうしてんの?」と聞いてみる。
「メシはあれだよ。インドのヒンドゥー寺院で朝メシ食わしてくれるんだよ」
「え?毎日?タダなの?」
「そーだよお前!インド人は気前がいいよなぁ! だぁはっは!」
 
 
コウちゃんは携帯もネットもしない。持ち物はマラカスと服のみ。でも不思議と、お金がなくても生き抜くのに必要な情報が入って来る。1バーツコインでペットボトルパンパンに水が汲める自動販売機もあるんだぞと教えてくれた。お金がなくても生きて行けることを知っている。
 
 
「そこのお寺に俺も行ってみたいんだけど、連れてってくれないかな?」
お安い御用ですよと言う感じで「ああ良いよ」と、翌朝連れて行ってもらう約束をした。
 
 

バンコクの慈悲

翌朝8:30。自筆の南無妙法蓮華経と書かれたTシャツ姿で現れたコウちゃん。朝から下ネタ炸裂のハイテンションで登場。御年70歳で現役バリバリのコウちゃんは、未だに1日最高で9回は自慰行為ができると言う、マカ知らずの妖怪っぷりだ。
 
 
「雄しべと雌しべがって、ばかぁ〜笑」
 
 
そうかと思えば、御釈迦様やキリストさんの言葉を引用し、自分の経験談を語ってくれる。
 
 
「御釈迦様は『全てを明らかにせよ』とおっしゃってる。『罪』の語源は『包み隠す』と言うとこから来てる。言うなればオープンでいなさいってこと。こっちは皆オープンに接してくれるだろ!」
 
 
コウちゃんの人付き合いは0か100だ。まずドバッと自分をさらけ出す。まず自分から。良いも悪いもなく本音で言う。それで付き合えるかどうかは相手次第。そんなストレートで一本気な人。
 
 
「だから日本じゃ友達全然いない!だぁはっはっは!」
見ていて気持ちがいいおっちゃんだ。
 
 
そんなコウちゃんはカオサンでもちょっとした有名人。10メートル感覚で行き交う人と挨拶を交わして行く。 そして、ホントに?と思うような路地を野良猫のようにすり抜け目的地に向かう。
 
話しているうちに朝メシを提供してくれるヒンドゥー寺院に到着。歩いて約30分。毎朝8:30~10:30の間の時間だけ配給しているらしい。コウちゃんは2ヶ月間毎日この距離を一人歩いて来ているのか。良く見つけたものだ。
 
寺院の中は誰でも、それこそオープンに入ることができる様で、中にはファラン(欧米人)の姿もちらほら散見した。寺院内はずっとアザーンの様な宗教歌が流れている。
 
 
イメージしていたのは、大阪のあいりん地区などでよく見る路上生活者や日雇い労働者への炊き出し風景。しかし、こちらは『貧困』や『神の慈悲』的な雰囲気は感じず、ただインド人が仲良くおしゃべりしながら食事をしている社交場の様にも見えた。でもきっとこれも神様の思し召しなのかもしれない。
 
「なんだ。いつもはカレーが2種類はあるのに今日は1種類しかねぇや」
 
 
かなり常連度の高いコメントをするコウちゃん。システムは自分が食べる分を自分でよそうビュッフェスタイル。それを地べたで縦列に座り込み食べるインド式。コウちゃんは朝からお代わりし、2人で手を合わせてその場を後にした。
 
「お金はどう稼ぐかじゃなく、どう使うか。 ゆうなれば・・・」
 
この日もなんか言ってたな。 あと血液型の話を飽きもせず、ずっと教えてくれる。 そして毎回、ある某血液型の嫌なところを並べ立てる。 そして思い出し怒り出す。一人熱くなり怒り出す。毎回この話。
 
 
こっちはすでにお腹いっぱいになっているのだが、お構いなし。 いい加減こちら側としても、いつまでも愚痴や文句を聞かされ続けるのもしんどい。 そして、聞きすぎるとなんだかこの人がちょっと嫌いになる。そうなる前に、 
 
 
 「はい、また某血液型の話してる。今日はもう某血液型の話禁止。俺もうお腹いっぱい』と言うと 、
「ダァハァー!話させてくれよ!でも本当にね・・・」
 
 
と僕の肩にポンと手を置く。一度、この某血液型の話のやりとりで、コウちゃんも僕も頭に血が上り、怒鳴り合いの喧嘩になったこともある。血液型話ときどき下ネタ。御年70歳。
 
 
そんな愛すべき面倒臭い人ことコウちゃんは、日本ではなく、ここタイで骨を埋めるつもりだと言う。その訳はまた次の記事ででも。

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3 Responses

  1. […] の宿を行き来して顔を合わせるように。 コウちゃんに付いてはこちら → I am not perfect but I am LIMITED EDITION (前編)   一度コウちゃんにちょっと付き合ってくれと言われ付いて行った。 […]

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